ブログ知人のよんばばさんがいつか紹介していた、「コンビニ人間」を読みました。
イヤー面白かった。一気に読みました。
男は仕事をして、結婚して子供をつくり育てて、家族を守っていかねばならない
女は、結婚して子供をつくり育てて、家族を守る、そうでなきゃキャリアウーマン
こんな、世間の常識と言いますか、道徳と言いますか、村掟と言いますか、同調圧力
と言いますか、そんなことどもと相いれない男女二人の話です。
表題にしたのは、ヒロイン「コンビニ人間」古倉恵子がバイト先で拾った、ヒモ願望の男の言葉です。
「誰にも干渉されずにただ息をしていたい」
私は、一旦この本を閉じて、腹を抱えて笑いました。
なんとまあ、率直な言葉でしょう。この男、本質は怠け者で、世間から非難される人間ですが、実に痛快です。本音をあけすけに言っているから痛快なんですね。
人間、誰にも干渉されることなく生きたいですよね。実際は、なかなかそうはいきません。彼の場合も「コンビニ人間」の女性の働きによって食い物を得てます。
さてヒロイン「コンビニ人間」。これは興味のひかれる女性です。
死んだ小鳥を「焼き鳥・トリカラにして食べよう」と言った幼稚園時代。
取っ組み合いをしている男子を止めるためスコップで殴った小学校時代。
ヒステリーを起こした女先生を黙らせるため、スカートとパンツを下した小学校時代。
父も自分たちも焼き鳥やトリカラ好きなのに、なぜおかしいって言われるの
喧嘩する二人に、「止めて」と皆がいうのでスコップで止めてあげたのに、なぜ怒られるの
みなヒステリーの先生に「やめて」と言ってるので、テレビのまねして、スカート降ろしたのになぜ怒られるの
いずれも彼女が素直に考えて、「良かれ」と思って行動したことです。彼女、このままでずっと育って行ったら、面白かったですね。しかし、それは世間に受け入れられませんでした。周りからいろいろ言われ、彼女は、どう行動すればいいかわからなくなります。
結局彼女の現在は、こうなります。36歳独身処女・コンビニバイト生活人間。どう行動すればいいかわからない彼女は、すべてマニュアル通りに行動すれば良いコンビニで、自分の生き方を手に入れます。コンビニ人間になります。
この現代の寓話を読んで私は、こんな疑いを持ちました。
我々は皆、「本音を隠し」、「世間や会社や社会がつくったマニュアル通り」に生きているんじゃないか?
世間の常識、村社会、他人指向型、指示待ち人間、社畜、付和雷同、同調圧力、没個性、空気、いろんな言葉が浮かびました。
このヒロインとヒモ願望男の二人を除いて、他の人間の描写が型通り過ぎると思いましたが、笑えて、考えさせられる、面白い小説でした。