昨日相馬市「千客万来館」で、福島第一原発(以下1Fと略す)事故で汚染された水の海洋放出について、福島大学の柴崎直明教授の講演会を聞いた。約60名が参加しました。
彼は、専門が応用地質学で、2015年に地質学専門家の仲間で作った「福島第一原発地質・地下水問題研究グループ」(原発団研)の代表なのだそうです。現在46名が所属しているそうです。
彼の話の要点はおよそ次の通り
①1Fは、元々地下水の豊富な台地を削った敷地に建てた設備なのに、事故前も事故後も、敷地の地質や地下水の実態把握が軽視されてきた。それゆえ汚染水対策が不十分で、膨大な汚染水を抱えることになった。
②東電の汚染水対策の中心の一つは、地下水バイパス作戦(建屋に流れ込む地下水を
くみ上げ、海に流す)であるが、計画の4分の1もくみ上げていない。それは、東電の地質把握が、間違っていたからだ。(東電は地質を砂と考えていたが、原発団研の調査によると、泥質的な層=水を通しにくい、も多数あることが判明)
③東電の汚染水対策の中心の第二は、凍土壁により建屋に流れ込む地下水を遮断する
作戦であったが、これも効果は限定的であった。(その証拠は、現在も雨が降ると凍土壁内の地下水位が上がるという事実=コントロールされていない)
その失敗の大きな理由は、地下原発構造物による未凍結部分の存在と、凍土壁の深度の不足である。
凍土壁は、コスト(345億円)・耐久性(7年と言われる)遮水性の信頼度低い、高い線量下での建設工事を考えると、適切でなかった。
④以上の欠陥から、汚染水は日々増加しており(2021年度、一日平均130トン)、これが、海洋放出をせざるを得なくなる根本原因である。
新たな汚染水を減らし、第二原発の土地も使って保管すれば、海洋放出の必要がなくなる。ALPSで除去できないトリチウムは、12年で半減し、100年でおよそ影響がなくなる。長く保管すればいい。汚染水の新たな発生を抑えるのが肝要。増え続けてはダメだ。
⓹原発団研は、汚染水海洋放出を防ぐため、根本的な汚染水発生量削減を提案した。その方法は、ソイルセメントを使った広域遮水壁の設置と集水井(しゅうすいせい)+水抜きボーリングである。
⑥広域遮水壁は、幅90cm、総延長は、3.7キロ、深度は、35m~50m、経費は凍土壁の半分、工期も数年程度。
集水井は、直径3.5m深さ35m~50mの大きさで、10カ所設置、水抜きボーリングは、この巨大井戸に流れ込む長さ数十メートルの水を通す穴。土砂崩れ対策によく使われる。
⑦この提案に対し、東電は、2022年12月21日、広域遮水壁は効果がないと説明した。それに対して原発団研は、東電の解析の非科学性を指摘し、再度我らの提案を真剣に研究するよう要求中である。
以上が、お話の概要。
私は、汚染水の海洋放出やむなし、その場合福島県沖やむなしと、考えていたが、この講演を聞いて考えを変えた。
原発団研の言う通り、広域遮水壁と水抜きボーリング付き集水井で新たな汚染水を防ぎ、それでも増える分は、第二原発の敷地を使って、保管するのが正解と思う。
先生の話によると、東電は、地質のボーリング調査の資料約200本のうち40本しか公開してなくて、公開したものは、生の資料ではないのだそうである。東電の隠ぺい体質はまだ続いている。
今朝の新聞には、東電の、ALPS処理水の海洋放出は安全というA4のチラシが入っていた。このチラシでは、トリチウムを基準以下に薄めて放出するというが、薄めても総量は変わらない。
また、このチラシでは、トリチウム以外の放射性物質も基準以下にしてから放出と言っている。
しかし、原発団研にもらったパンフ資料によると、「2022年に公表したALPS処理水のトリチウム以外の放射性物質の基準越えが、なんと66%ある。10倍から100倍が13%、100倍以上が5%。この5%の中には、基準値の2万倍!」のもある。
国・東電は、ALPS処理水は安全だとごまかさず、この原発団研の言う通り、根本的な汚染水削減策を実行し、陸上保管をしてほしいものだ。
原発団研は、学者中心の団体である。彼等で実測もして、集まって研究し、国・東電と違う研究成果を得て、提案をしている。
こういう学者は、国にとっては煙たい存在だろう。だからこそ貴重なんだと思う。
また、煙たいからこそ、国は、学術会議に口出ししたいんだと思う。今国会で国が口出しできる仕組みを法制化しようとしている。学術会議と多くの専門部会はこれに反対している。
政府の介入は、憲法の学問の自由の侵害に当たる。真実に迫れなくなる。
それはまずい。
皆で、反対しよう。学術会議を応援しよう。
私の、スタンデイングのプラカードです。今日は南相馬のスタンデイングの日でしたが、欠席しました。昨日の雪の為、道路が凍結でシンパイだからです。軽トラは雪に弱いのです。