散歩雑感

三時ころ目を覚ました。もうねれない。仕方ないので、確認したいこともある「クロ現ー虐殺」を見るか、と起きだした。が、NHKプラスにアクセスできない。あーあ、いやになっちゃう。また布団にもぐるが寝れない。年寄りはつらい。まだ暗いけど4時散歩に出発した。

 

相馬市を貫流する宇多川の土手コース。あれ、どっちが右側だっけ。上流に向かってだっけ、下流に向かってだっけ。前調べたけど忘れた。

 

とにかく下流(東の方、太平洋の方)に向かって歩く。

街を外れると、街灯はない。でもほのぼの明るい。俺の背中には月の光が当たっている。月の光でぼんやり堤防の道が見える。

「I  can   remember   when   we   walk   together・・・]

「moonlight   show  the  way   so   we  can   follow・・・・」口ずさむ。

あれ、エンゲルベルトのこの歌なんって言ったけ?近頃忘れっぽい。特に人の名はダメ。「年は取りたくない」、というと妻「あなたは昔から人の名前なんて覚えが悪かったでしょ」、・・・確かに。 勿論今俺は一人である。妻と歩くのは嫌である。合わせるのは嫌だ。月光の中を恋人と歩いた経験もない。

 

東の方も白んできた。その上には明るい星が見える。明けの明星って言ったっけ?

振り返ると仰角40度に大きな満月。

いいなあ、美しいなあ。「ひんがしの野にかぎろいの立つ見えて顧みすれば月傾ぶきぬ」、あれ、これって春の歌だな。傾ぶく月影、って何だっけ。第一、光をなぜ影というのだ。

 

どうでもいいことを思いながらさらに行くと、東の空が赤くなる。古語で「あかとき」と言った。ほんとに赤い時だ。(注:赤い時から、あかとき、あかつきという言葉が出たかどうかは知りません)

 

あの「うみよ眠れ」の表紙を思い出す。安野光雅制作の表紙。ミッドウエー海戦の夜明けから夜までを6枚の表紙に描いている。(表紙の色の変化は、お薦めです)

 

この本の表紙をきれいだなあ、と思った。その下で殺し合いをやっているのに。

 

「うみよ眠れ」の作者澤地久枝は、ミッドウエーの海をどこまでも澄んでいてきれいと言っていた。漂流者の兵士もその美しさを言っていた。澤地は、書いた本に手紙を添えてミッドウエーの海に沈めた。あの本は、兵士たちへの鎮魂の本なのである。供養なのである。私も読んでて、それを感じた。

 

ミッドウエーの死者たちは恵まれている。骨は帰らなかったけれど、澤地久枝により、その名とともに、人となりと死をできる限り本に載せてもらえた。

 

餓島とよばれた、ガダルカナルをはじめ、南洋諸島で戦死・餓死した兵士たち、サイパンテニアン硫黄島・沖縄・フィリッピンの民間人・兵士たち、インパールの兵士たち、中国大陸の戦死者たち、満州引揚者、原爆・空襲の死者、日本国民310万人の死。

そして、それに数倍する東アジアの被害者。われらは加害者だー。

 

310万の中には、名も分からぬ死者が多数いる。千鳥ヶ淵墓苑には無名の戦死者はどのくらい、いたんだっけ。

 

国家権力とは、人の命も召し上げる怪物である。権力は、美しい言葉を言うな。「靖国の御霊」「玉砕」「皇国に命をささげる」「英霊」「聖戦完遂」「世界の中心で輝く国」「積極的平和主義」「台湾有事は日本有事」・・・・。

 

国民は、権力の、声高なあるいはささやく言葉に酔うな。「大君の辺にこそしなめ」

大東亜共栄圏」「八紘一宇」「五族共和」「元帥の敵討ち」「東アジアの安保状況の厳しさが増し」「敵基地攻撃能力は抑止力を高め」・・・。

 

一方、こういう疑問も兆す。侵略されたら戦うか?

TVで見たウクライナの女性兵士は、大けがが治ってまた戦場へ行くという。

正義の戦いに参加するのはいいか、悪いか、いやこの聞き方は良くない。それぞれの決断だ。俺は、あなたは、侵略されたら戦うか、その準備はしておくべきか。自衛隊に戦ってもらえばいいか?それは己の命財産を他人の命で守ってることにならないか。なってもいいか、仕事だからいいか。それでいいか、悪いか?

 

 

こんな答えのないこと(しるしなきこと)をぼんやり考えながら、町に戻ってきた。私の街は、新築と空き地が多い。

 

ビックリするほどである。

 

この10余年、3度の震度6、2度の洪水に見舞われた。故に新築と空き地が多い。新築は、黒っぽい家が多い。時代の気分?そんなわけないよな。

 

日本のGDPが多いというのも豊かさを示さないな。家を新築すればGDPが上がるんだから。日本のGDPに災害はどのぐらい貢献しているか、大陸諸国と比べると、きっとすごく大きいぞ。災害列島日本。

 

我々の、新築の家も車も服も食べ物も健康も子育ても、底で支えているのはなんだ。この数十年、国の毎年10兆~40兆円の借金とその支出でそれは維持されている。その借金積み上げて1000兆を超える。近頃は日銀が借金を引き受けている。大丈夫か?タコが自分の足を食っているイメージだけど大丈夫か?大丈夫だろうか。返さなくていいわけない。誰が誰にいつ返すのか?

 

 

こんなことをぼんやり考えて、散歩に行ってきました。

 

そして思い出して、書いてます。