安保法制は、危険で損な戦略だ

麻生太郎が、訪米中に「台湾有事の場合、日本の存立危機事態と政府が判断する可能性が極めて高い」と言った。日本政府の公式見解ではないけれど(公式見解?まさかね)政権党の副党首かつ元首相だからね。中国を刺激してさらなる軍拡競争を進める方向

に引っ張る。

 

さて、

存立危機事態とは、2015年自公が成立させた安保法制の一つである武力攻撃事態法で規定されたもので、日本に直接の攻撃がない状態でも、日本が武力を行使する要件の一つである。

 

存立危機事態の場合、密接な関係のある他国への武力攻撃に対して、日本が武力を行使するというものである。いわゆる集団的自衛権の行使である。

 

要するに、麻生の言うのは、日本政府は、中国が台湾に武力侵攻した場合、それを「日本国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される危険がある」(武力攻撃事態法の一節)と考え、中国に対して武力攻撃(反撃)するというものである。

 

もし本当に中国による台湾への武力侵攻があったら、日本は、中国空母・潜水艦・駆逐艦上陸用舟艇・人員・弾薬・物資運搬船等を攻撃する。中国上陸軍へのドローン、無人機、ミサイル攻撃、戦闘機爆撃機での攻撃をする。さらに一昨年末閣議で決めて、整備しようとする敵基地攻撃能力を使うことになる。これは、中国本土を攻撃できるミサイルを発射するという事である。

 

この場合、中国はどうするか。日本の自衛隊・民間艦船及び嘉手納・佐世保・岩国・横須賀等々自衛隊基地・米軍基地を攻撃する。全面戦争になる可能性がある。核の使用もあるかもしれない。

 

勿論、麻生だってこういう事態を望んでいるわけではないだろう。多分。軍事的抑止力で中国の台湾侵攻を抑えようとするために言っていると思う。ただこれは、中国の軍事力増強を後押しする。つまりは軍拡競争の激化になる。

 

軍事的抑止力は、相手の攻撃に対してそれ以上の攻撃をする用意をしておき、それは、相手にとって犠牲が大きいので、相手が攻撃を断念するという戦争防止の手段である。

 

これは、相手が合理的判断をするという前提に立つ。合理的判断の中核は損得勘定である。

 

しかし、人も国家も合理的判断をいつもできるわけではない。窮鼠猫を噛むという事もある。帝国日本のように大局を見る能力がない場合もある。正義は我にありと思う場合損得勘定を捨て去る場合もある。メンツという事もある。

 

 

さて、

現在、殆どの国家が、北京政府が中国の正統政府で、台湾を独立国と認めていない。米日も同様である。米日が集団的自衛権を行使した場合、内政不干渉・領土不可分とい国際法の原則違反になる可能性がある。世界の国の過半数が、中国側に立つ可能性もある。つまり正義は、北京政府にありと思うかもしれない。損得勘定で、北京政府につく可能性は高い。下手すると、米日が、ウクライナ侵略者であるロシアと同じにみられるかもしれない。つまりは、ドンバス地方(ロシア)=台湾(米日)という構図である。


麻生も日本だけで抑止するとは考えていまい。麻生の軍事的抑止のよって立つ根拠は、米国の軍事力である。ところがこの米国が、中台戦争の場合、台湾を助けるかが怪しい。民主党のバイデン政権が、独立国ウクライナを武器支援しかしないのだから、中国の一地方である台湾を助けるため、米国が軍事力行使する可能性は極めて低い。共和党はなおさらである。トランプでは、尚さらさら(笑)である。私は、台湾と日本だけが中国と戦い、米中はテキトーな所で妥協する可能性が高いと思う。損するのは日本だけという事にならないか。

 

なのに麻生は、台湾を助けるため、日本政府が軍事力を使うという。苟も元総理・現政権党副総裁だからなあ。本気じゃないよね?日本政府は麻生の言う通りの選択をするのかい。そうじゃないだろう。

 

そうでなければ、

少なくとも日本政府は、何らかのルートで、中国政府に、麻生発言は日本政府の正式の考えではないと伝えておくべきだ。立民は、麻生発言を批判すべきだ。米国だってあいまい戦術(中国の軍事侵攻にどう対処するかについて)なのに、麻生はバカだなあ。

 

中国は、今のところ損得勘定・合理的判断をするだろう。しかし、経済破綻した場合が怖い。国民の目を対外緊張に向けさせ、政権安定を図るのである。その時は台湾侵攻があるかもしれない。

 

 

日本国は、せっかく憲法9条があるのだから、そして、それを作らせたのは米国だから、そして唯一の戦争被爆国なんだから、米国のもともとの意思に沿って(笑)、安保条約の範囲内(日本国領域内への攻撃に対してのみ、日米共同で対処=1999年周辺事態法以前=厳密な意味での専守防衛)で行動すべきである。米国がそれが嫌なら、安保条約をやめればいい。世界でも有数の軍事力を持つ自衛隊がある。

 

中国とは、日中共同宣言・平和友好条約の筋で行けばいい。尖閣は、国際司法裁判所

に決めてもらうという方針で、最悪の場合、尖閣を獲らせて、その非を訴える作戦が良い。

 

南西諸島・沖縄がとられるかもなんて向きもいそうだが、中国の台湾所有の根拠が領土不可分の原則故、同様の理屈で南西諸島・沖縄も日本のものという論理は、中国にも世界にも通用する。

 

それよっか、日本政府・日本国民の沖縄いじめの方が問題だ。大切にしなきゃ。沖縄独立論が強くなったら、沖縄が中国にとって、ロシアのドンバス地方になっちゃうよ。ロシア系の多いドンバスと違い、沖縄は、中国系住民がいるわけではないので大丈夫と思うがね。

 

 

まあ、少なくとも、麻生流の「米国の東アジア覇権維持のための先兵となる集団的自衛権行使」よりは、安全と思う。

 

さて明日の台湾総統選、民進党・国民党・第三勢力、いずれが勝っても台湾は、現状維持に収れんするだろう。

 

中国政府も、現状では、損得勘定から、本心は現状維持だろう。台湾を手に入れても維持のコストが高い。また高度技術・人員が流出する。評判を落とす。信用を失い世界進出にブレーキがかかる。そんな判断から現状維持を選ぶ可能性の方が大きいと思う。

 

それにしても麻生発言のような、危険かつ損な安保法制を作った安倍はバカだ。それを認めた自民党も馬鹿だ。派閥は政策集団でない!ことがよくわかる。何せ2014年まで、つまり安倍内閣が解釈変更をするまで、自民党は、「集団的自衛権は、行使できない」だったんだからな。政策集団ならそれまでの解釈に固執する派閥があってもいいだろうに。

 

明日の総統選は、一つの注目点だ。

 

失敗失敗、昨日の夜書いたんだけれど、投稿を忘れた。今日もうすぐ台湾総統選の結果が出そうである。(1月13日)