オッペンハイマーの苦悩/CIAの陰謀

映像の世紀バタフライエフェクトを二本みた。

一つは、「マンハッタン計画-オッペンハイマーの栄光と罪」

 

オッペンハイマーは、「原爆の父」と言われ、マンハッタン計画で、原子爆弾を製造した中心人物である。この番組は、彼の原爆製造時の考えと原爆投下後の考えの違いを際立たせていた。

 

原爆製造前

〇原爆は、自由のための戦争で、敵に打ち勝つために必要なもの

〇ドイツ降伏、日本の降伏も目前の段階で、同僚が原爆製造に疑念を表すると、それを

 厳しく否定。

〇科学者とは、技術的に素晴らしい見込みがあるなら、試して成功して、その後に何をなすかを考える存在。

原爆投下後

〇(トルーマン大統領との会談)「自分の手は血まみれ」

〇(同僚技術者との話し合い)「原爆を、善意のある武器と思うな」

〇(感謝状贈呈式で)「原爆には、誇りと深い疑念を持つ」

〇(広島・長崎の被害を見て)「原爆は、侵略兵器、奇襲と恐怖の兵器だ

〇(来日中)「後悔はしてない。しかし、申し訳ないと思っていないわけじゃない」

〇(最後のインタビュー)「原爆開発に大義はあった。しかし科学の道から逸脱した。

            「今になっても、よい道が見つからないのです」

 

オッペンハイマーは、原爆製造に大義を見出し、成功させたが、原爆投下後は、広島長崎の被害を見て、深く悩んだようだ。

 

科学者は、その開発する技術に責任を持つべきであろうか?難問である。どんなことが生じるか、先を見通せない科学技術も多かろう。アインシュタインハイゼンベルクの段階では、原爆を見通せなかった。

 

しかし、オッペンハイマーの開発段階では、一般人まで殺傷することは容易に想像できたはずだ。それを使えば、戦争犯罪だ。しかし使うと決断するのは政治家だ。オッペンハイマーに罪はあるんだろうか?

 

開発を中止することはできなかったのか、それを要求するのは酷なのか?膨大な予算・膨大な人員を使った開発の責任者として、それはひどく難しいのはわかるけど。

 

 

一方、投下を決断した政治家は厳しく断罪されるべきだ。

オッペンハイマーとの会談で、トルーマン大統領は、「私の手こそ血で汚れている」と言ったが、原爆投下成功の報を聞き、そのインタビューに答える合間に、笑みを漏らしていた。またオッペンハイマーを「泣き虫、二度と連れてくるな」と酷評した。

 

トルーマン大統領は、米兵の命の節約という大義名分とソ連へのけん制という目的で投下を承認した。日本が戦争終結の意志があると知りながらである。(日本は、ソ連を通じて和平交渉を打診してた。それを当然知っていた)

 

原爆投下は、ハーグ陸戦条約などで禁止されている、武器を持たない一般人殺害(無差別殺害)という犯罪である。トルーマンを厳しく批判すべきだろう。

 

私はやはり、あの原水爆に否定的だったオバマ大統領が、広島を訪れた時、謝罪まで言わなくとも、原爆投下は、国際法違反と言ってほしかった。昨年の広島サミットで、岸田総理に原水爆禁止の方向に一歩でも、G7首脳を引っ張ってほしかった。例えば、核先制不使用条約締結の提案とか。核禁条約締結を検討とか。あれでは、広島でサミットやったことは、無意味だろう。

野党は。核禁条約締結を打ち出してほしいものだ。

日本の総理大臣は、南京を訪れ、戦争犯罪を謝罪してほしい。それが難しいなら、満州事変発端の柳条湖へゆき、侵略戦争謝罪を何らかの形で示すべきと思う。

 

 

何故我々は、ロシアのウクライナ侵略を批判するのか、できるのか、なぜイスラエルのガザ虐殺を批判するのか、できるのか、その根拠は、国際法にある。ロシアやイスラエルを糾弾するのは、厳密にいえば、国際法を守ろうとする国家にしか資格はない。いや、言ってもよい、が説得力がないだろう。

 

確かに国際法は、強制力が弱い。しかし、「力による現状変更はダメ」という根拠は、国際法にしかない。すべての国家が国際法に従うよう、国民は自国に働きかけるべきだ。とってもとっても難しいことだけど、「公正と信義」は、すべての諸国民にあると信じて、その方向に0.01μでも押すべきである。とはいっても私は何もできないけどね。

 

もひとつは、「CIA~世界を変えた秘密工作」である。

CIAが戦後の政治世界で、どんな暗躍をしたかを、映像とナレーションで示した番組。

時系列で言うと

〇イタリア・・・共産党員激増で社会主義政権が出来そうなイタリア総選挙で、CIA

        は、莫大な資金を投入し選挙介入(野党・市民団体支援、フェイクニ

        ュースを流す)

〇イラン・・・人気のあったモサデク政権の石油国有化に危機感を覚え、CIAは、ギャ

       ング・宗教団体を買収し、偽モサデク支持の暴動を起こさせ、国民との

       離反画策。その後反モサデク暴動を扇動して政権打倒。石油利権の40%

       獲得

ハンガリー・・1956年、ソ連フルシチョフの反スターリン演説を東欧に流し、反社会 

       主義気運醸成。CIA資金で「フリーヨーロッパ」(ラジオ放送)設立。

       同放送は、反政府デモを扇動ソ連軍の弾圧を招く。即ちハンガリー

       乱。同放送の援助が来るというフェイクで、ブタペスト市民多数の犠牲

       20万の難民を生む。

〇チリ・・・1970年初めて民主主義的に誕生したアジェンデ政権は、富の再分配を目指

      し、銅国有化をはじめ、民間会社の国有化を進める。危機感を持った米国

      は、CIAに政権打倒工作を指示。資本家・富裕層・新聞社を動員し、物流

      を麻痺させ、政権打倒を画策。しかし労働者等のアジェンデ人気は高く、

      失敗。1973年9月11日チリのほぼ全軍がクーデターを起こす。アジェンデ

      は戦うも自殺。この軍事クーデターへのCIAの関与がどれほどかは不詳。

      しかし関与への多くの状況証拠がある。

 

 大体の話は知っていたが、知らなかったことも多かった。

「フリーヨーロッパ」放送の嘘で、多数のハンガリー市民の犠牲が出たこと。

アジェンデ後のピノチェット独裁政権の主要経済閣僚が、新自由主義の中核フリードマンの教え子だったこと。フリードマンノーベル賞授賞式で、アジェンデ支持者の「

フリードマン帰れ、チリ、バンザイ」という声が上がったこと。

 

思えば、格差是正を目指した社会主義の凋落が、新自由主義の跋扈を招き、格差拡大

をもたらしていると考えれば、チリのアジェンデ政権崩壊の後景にフリードマンがいるのは面白い。恐らくフリードマンは、チリを己の経済学説の実験場としたんだろう。

 

 

この番組には、日本でのCIAの活動は出てこなかったが、やらないわけはないと想像する。CIAは、反共が主眼の活動故、あの統一教会勝共連合岸信介と関係があったと言われても、驚きはしない。

 

 

 

CIAの秘密工作に見られるように、

米国政府が、内政不干渉という国際法の大原則を無視して行動してきた以上、いう事を聞かない国々が出てもしょうがない。

 

思うに、米国の正義は、片面の正義であった。もう片方はただれた片面であった。オペラ座の怪人のようである。しかし、オペラ座の怪人は、心根はきれいだった。米国は?

まずは、政府と国民は区別して考えるべきである。かつては、ベトナム戦争反対の大運動があっった。今もガザ人虐殺反対の運動がある。米国政府が、国際法に従って行動するよう政府を動かしてほしい。