アメリカのこんなとこ、好きだなあ

米海軍が、1日か2日、全艦艇の運用を停止すると発表した。

米韓合同演習をめぐって、北朝鮮との緊張が高まっているこの時に、である。海軍艦艇の事故対策のためという。北からのミサイルをイージス艦で撃ち落とすんじゃなかったけ?

穿ってみれば、北のミサイルなんぞ問題じゃないと世界に見せているのか、北へ余裕を見せているのか、北へ本気で攻撃する気はないぞ、というシグナルなのか?隙を見せて撃たせようというのか?

私はいずれでもないと思う。素直に「ちょっと間、全員通常勤務をやめて、調べろ。事故多すぎる、信頼をなくす。もっと気合を入れろ、なぜ起きたか調べろ」なんだと思う。

北との緊張関係を考えると、そんなこと黙ってやればいいものを。北に隙を見せるのではないか、とも思う。

そこがアメリカなんだと思う。

1951年(昭和26年)5月8日の天声人語は、朝鮮戦争の最中、解任されたマッカーサーを議会に呼んで証言を求めていることについて、こんなことを言っている。現代にも大いに関係する興味ある部分なので、少し長く紹介する。
「・・・(マッカーサー以外に)マーシャル国防長官、アチソン国務長官、ブラドレー統合参謀本部議長らの証言によって、アメリカの世界政策や戦略が裏表からレントゲンを撮ったように明らかにされるわけだ。・・・極東並びに世界の軍事、政治の処理という内容の重大さにおいても、20世紀後半期の世界史を決する空前の大論争といってもよい。トルーマン大統領のやり方で果たして朝鮮動乱が局地的に解決するものやら、マ元帥の行き方で果たして全面戦争に突入することなくして極東の共産勢力防止しうるものやら、容易に判定は下せない。偉大なマ元帥を突然解任したト大統領の措置には、米国民も感情的には快からず思っているようだが、政治が軍事を支配すべき原則については、米国民も理性的に支持承認しているように見受けられる。論戦するマ元帥自身も大統領の解任権そのものは潔く認めている。往年の我が国と思い合わせて感無量である

マッカーサーは、中国義勇兵(実際は正規兵)の根拠地、中国東北部への攻撃を考え(原爆使用も考えたらしい)トルーマンは(彼も一時原爆使用を考えたらしい)、それが、中国、場合によってはソ連との全面戦争になることを恐れて、マッカーサーを解任したのである。その後2年にわたる交渉で、今の休戦状態になったのである。どちらが正しかったかは、誰にもわからない。共産勢力は抑えることができたが、ご覧の通り解決は出来ていない。まったく、もう70年近くになるのにである。東西冷戦も終わったのにである。緊張状態がよいと考える輩がいるんじゃないのかい?

まあそれは置いておく。「天声人語」の次の文章が私には感無量である。

「政治、軍事の最高責任者がこもごも立って、国防の秘密をあけすけ論ずることは、見方によれば民主主義の弱点をさらけ出しているともみられるが、敵陣営に筒抜けになるのも顧みずにガラス張りの舞台で堂々と大事を論議するのはデモクラシーの一大偉観でもある。世界各国が皆この手で行けば、国民の知らぬ間に戦争になることはないはずだ」

アメリカは、油断ならない国と思う。秘密にやっていることも多かろう。国際法違反もする。「力が正義」には、異論がある。しかし、こういうあけっぴろげな所もある。そういうとこ、好きだなあ。トランプ大統領をめぐっての大もめ、見方によってはうらやましい。翻って現在のわが日本、「記録ない」「記憶にない」「言ったような、言わなかったような」・・・いやいや、よしておこう。みじめすぎる。