NHK 映像の世紀・バタフライ・エフェクトで表題のドギュメンタリ―を見た。
どうも、食い足りないと言うか、消化不良の番組という感じがしている。それは2つの点で感じた。
先に、同じ映像の世紀で、「敗戦国ドイツ」を見て、同じ敗戦国である日本を、NHKがどう扱うか、興味を持って放映を待っていた。
ドイツ編では、戦後、加害者(ドイツ)が被害者(東欧・ユダヤ人)に、被害者が加害者になったことが描かれていた。それと同時に、それと同じウエイトで、双方の謝罪と和解が描かれていた。
参考:拙ブログ
日本編のこの番組は、日本の加害者という面を描かず、殆ど、戦後の日本人の被害面を描いていた。勿論謝罪と和解が描かれることはなかった。
満州事変~敗戦までの日本人の死者数310万人に対して、中国・東南アジアの死者数は、少なくとも2000万人と推定されているのに、である。
この加害面ということを描いてないので、謝罪と和解(の不十分さ)がボケている。
それは、戦後日本の政府と国民がごまかしてきたことである。NHKの罪ではない。しかし、NHKは、扱うことが可能のはずだ。不十分だったことを扱えるはずである。逃げたんだろう。少なくともドイツとの比較は、できるはずだ。
食い足りないと思う点の一つはこれである。
もひとつ、食い足りないと思う原因は、扱う事象が多すぎるという事からくる。
確かに日本帝国の崩壊・解体の過程での日本国民の運命という巨大事象ゆえ、多くの悲劇があるのは当然である。
でも何か、散漫な感じがした。
〇ソ連軍侵攻下の略奪・強姦・逃避行の悲劇、
〇シベリア抑留の悲劇(60万のうち6万人死亡)
〇帰国者の生活苦・被差別
〇戦後の開拓入植者の辛苦
(やせた土地の供与、その土地の取り上げー成田空港、つくば研究学園都市、六ケ所村、福島・東通原発用地の一部、ブラジル移民)
〇中国残留孤児の悲劇
(日本での生活苦、家族引き裂かれ、中国・日本両国で2つの家族を持つ悲劇)
次のような興味深いエピソードあるので、何かもっと絞った方が良かったと思う。
なかにし礼の「人形の家」が、満州開拓団の棄民を歌っていること
ちばてつやの代表作「あしたのジョー」に、彼の飢えの経験が影響していること
彼女は満蒙開拓団の子供で、ソ連軍侵攻で逃避行。戦後この地に開拓入植。そして原発事故で、故郷を追われる。彼女は言う「原発爆発で逃げたのは、満州での逃避行のように思われる。」と。
確かに多すぎるな。
戦後の多くの日本人家庭で、戦争・敗戦の影響があったと思う。
我が家は、樺太からの引揚者である。昭和20年祖父の故郷の相馬に戻ってきた。
金も財産もない。住む場所も転々としたらしい。
よく思い出すのは、「山の畑」と称していた畑である。戦後里山を開墾して、7畝の畑を作った。わが家族は、戦後開拓者の一面を持つ。
私の高校時代の春休みは、鍬でこの畑を耕すのが義務であった。勿論ジャガイモや夏野菜を植えるためである。
今は、この畑一帯は元の山に戻っている。自分が鍬を振るった畑がどこだったか全くわからない。(笑)
私が近頃よく思うのは、我々団塊(広くとって、昭和22年から25年)の親は、どうして俺たちを、大量に産んだろうと言う事。年間250万人前後。今年は70万人を切るらしい。
勿論出征兵士の帰還、日本人の帰国、男女の出会いの多さが根本にあるんだろうけど。結婚・子を産み育てるのが当たり前の社会だったんだろうけど。戦前戦中の「産めよ増やせよ」の国策スローガンはなくなった。出産費用補助・子供手当なんて充実してなかったろうに。医療技術も進んでなく、出産も危険だったろうに。なぜ結婚して子を産んだろう。今は何故結婚せずに、なぜ産まないんだろう。