「絶望の国の幸福な若者たち」を読んだ感想(古市憲寿著)

①随筆を読んでいるような感じがした。いや、知識と知性がある若者のおしゃべりを聴いているような感じを受けた。「だけど・・・」、「だって、・・・」という話し言葉が結構入っているのがその理由かな。


②ユーモアというか、諧謔というか、ところどころにあって面白い。


③まあ、参考文献の多いこと多いこと。


④1章。「若者」論の歴史→なるほど。特に若者論の分類がなるほどと思った。「異質な若者」「都合の良い協力者」「文化論」「実証研究」

⑤2章。近頃言われている若者についての筆者の分析→統計を使っているのでなるほどという部分が多い。

とてもびっくりしたのは、「今の若者は、1970年代以降で一番生活満足度が高い」ということだ。しかし、不安を感じている度合いも高い。不安だけど生活の満足ってどういうこと?その答えは、「今日より明日がよくならない」と思う時、人は「今が幸せ」と答えるとのこと。納得した。その幸せは、仲間といること。これもまた納得した。

⑥3章。現代日本の若者のナショナリズム論。

日本民族・日本語、日本歴史、日本国なんてものを明治政府の作りもの、つくられたお話、「想像の共同体」と考えるのは、当然である。このような考えをぜひ広めるべき。


「戦争が起こったら、もちろん逃げる」というのが他国に比べて、現日本人に多く特に若者に多いというデータ、面白いねえ。逃げる行動を筆者は肯定している。


自民党政権がずっと、国防意識強化を言うわけだ。建国記念の日国旗国歌法教科書検定教育基本法改定、教科書検定基準見直し、・・・

なんセ「戦争が起こったら国のために戦う」という国民が他国に比べて圧倒的に少ないんだものね。


⑦4章。現在の若者の日本・社会を変える運動の紹介→小熊英二氏の「社会を変えるには」の方が鋭いな。もっとも古市さんの先生とか。


⑧5章。東日本大震災に影響された若者の行動の分析→なるほど。僕に、インターネットの限界を教えてくれた。お祭りみたいな反原発デモ、なるほど。

⑨6章。全体のまとめで圧巻である。「絶望の国の幸福な若者たち」という題名がそのまま妥当する内容だ。現在日本のわかものは、中国の農民工みたいなもの→なるほどねえ。
若者の二級市民化、幸福な階級社会、一億総若者化時代→うーん。そうかもな。


終結論=財政破綻?侵略される?だからなに?日本が終わってもいい。→うーん。


古市氏を含む若者たちへの手紙。

私は、君たちに揶揄される全共闘世代のあまり政治活動に活発でなかった学生で、その後
は、年功賃金制に守られ、安定した職業生活を送って、約3年前に定年を迎えたものです。


私は、自分の生きてきた時代を日本の歴史の中で最も恵まれた時代と思っています。それは、敗戦、人口構成の恩恵、米ソ冷戦、技術革新など一人ひとりの力以上のことで起きたこと=運が良かったのだと思います。


私は、自分が良い思いをした良い日本を出来るだけ、みなさんに手渡せたらいいなと思ってます。


私が言う良い日本の基礎は、日本国憲法にあると思います。日本国憲法は、制定当時の日本国民が、こんな国つくろうよと言って作った日本という国のデザインと思います。それには、人類の悲惨と英知の結晶が反映し、大日本帝国の失敗が反映していると思ってます。国民主権、人権尊重、平和主義。不徹底があり、後退がありましたが、曲がりなりにも、何とか、これを守ってきたと思ってます。これを出来るだけ、ゆずりたい。


憲法下の日本国も権力です。戦争状態を迎えた日本国は、国民を逃しはしない。特に若者を。権力を握るものは、己の利益のため、若者を捉える。金子光晴の「富士」の詩にあるように、逃がしはしない。
国連は、確かにある条件のもと、戦争を肯定する。しかし戦争が良いとは言えない。

日本の若者も他国の若者も戦争なんていやでしょ。仲間と日常生活してた方がいいでしょ。戦争が起これば、戦争を起こした人は戦争の惨禍からは遠い。年寄りの業突く張りに騙されちゃいけない。


年寄りも若者も戦争を防ぐ手立てを考えましょう。究極、非武装無抵抗降伏という手もあります。
「一人ひとりが幸せなら、日本がなくなったって良い」、この考え私も賛成です。しかし、どうやらこの列島に生きる人が国家を手放すと一人ひとりは不幸せになりそうだ。
一億の人間の国家意思としての戦争否定は強いと思う。
政治・経済・社会体制で理想の国がありますか。その国に占領されてその国のようになりたいですか。そのような国がありますか。



少子高齢化社会の大変な負担、世代間による富の偏り、世代内での富の偏りは確かにあります。若者から見れば将来は絶望だと思う。年寄りから見てもだが。それは、税制や施策で緩和しましょう。緩和じゃ駄目ですか。

総合累進課税制(所得税)や相続税贈与税強化や累進性も加味した消費税をやりましょう。借金を支えているのが、高齢者の富という問題はありますが、年寄りの富の政府経由の若者への移動の方が若者の平等をもたらす。これから先が長いんだし、夢のあった方がいい、それは古市さんの言うとおり、辛くもなるだろうけど。


誰かの「ゆずりは」の詩にあった。「全ては君たちのものになるのです。」
しかし、借金や放射性廃棄物や不要なインフラは残したくない。原発廃止、公共事業の無駄はなくしましょう。


財政破綻、激烈な経済変化、巨大地震津波、いろいろ危険はあります。しかし、出来るだけ対処できるように今から考えておきましょう。



良いも悪いも、全て君と君の友人と君の恋人と家族のものとなります。