番組作りも視聴も難しい

NHK 映像の世紀バタフライエフェクト「復興から太平洋戦争への18年」

思ったことは、この作品は何が言いたいんだろう、という事でした。

関東大震災から太平洋戦争までの日本を描いて、大切なことをいっぱい言っていると思うんですけど、結局何が言いたいか、私には分かりませんでした。この作品を作る人も見る方もぐちゃぐちゃなんだと思います。

 

でもそれが、普通なんでしょうかね。小説だって、映画だって、ドラマだって同じなんでしょう。しかし、学術論文はそうではないな。○○は○○だ、これこれを証明すると、はっきりしていて、それが正しいかどうかの検証がある程度できる。ノンフィクションも事実を追求するのでしょうけど、こちらは、視点というものがあるなあ。

 

 

俺は何を言いたいんだろうか。

あるハッキリした主張を持つ作品とそれを持たない作品があって、この作品は、後者で視聴者の解釈に任せている、それはそれでいい、という事かな。

私ははっきりした主張がある方が、正誤を考えるうえでいいんだけど、視聴者に任せるというのもいいと思う。

 

さて、この作品の印象に残ったことを列挙します。それに関連する感想。

⓵大震災の時焼け残った神田 佐久間町・泉町は、火災対策の手本とされた。ここは、

町民が団結して神田川の水を汲んで消失を免れた。それが手本となり、宣伝であおり、太平洋戦争時の「逃げてはならぬ、団結して火災に対処せよ」という命令となった。それが、東京大空襲の10万の死者につながった。この二つの町も消失した。

→この二つの町は良い条件があった。神田川の存在と火災の時差。科学的・客観的分析の上で教訓を作らないとまずい。

 

②大震災の経験が防火訓練やがて軍事訓練に発展していった。バケツリレー消火などである。それを無理と嗤った信濃毎日新聞在郷軍人会などに攻撃され、新聞社は謝罪し、これを書いた桐生悠々は退社。この頃からメデイア統制が始まった。統制が決定的になったのが2.26事件。軍はメデイアに脅しと接待をした。

→今の政治もかなあ、なんか、総務大臣が停波なんて脅し、メデイアの親分と首相の会食があるそうだけど。大丈夫?現代日本脅しと接待じゃないの?

 

③大震災は、騒乱を収拾に役立った軍隊への国民の評価を高めた。これを軍部も良い機として、国防意識高揚に利用した。

東日本大震災の時自衛隊の認知度は上がったのは間違いない。人気も上昇。しかし、パワハラ・セクハラ等現実は違い、希望者が減少中とか。

 

④渋沢は、大震災を「天譴」(天罰)と言い、それは、当時の指導者たちの私利私欲も批判するという意味が大きかったが、指導者たちは、大震災を「国民の自由や豊かさの追求」を罰したものと拡大解釈して、やがて「ぜいたくは敵だ」などになっていった。

→そういえば、有力政治家が「東日本大震災は天罰」みたいなことを言ったな。石原慎太郎だっけかな。俺ら東日本の田舎者は、地味な生活してて天罰なんておかしいだろう、石原さん。

 

⓹大震災をきっかけに隣組やラジオ体操が盛んとなり、国民の意識動員に使われた。隣組は助け合いという事もあったけど、相互監視という面もあったと番組でいっていた。

→やだな、監視のし合いなんて。なるほどものすごい数の一斉の整然としたラジオ体操ってのも不気味だな。鳩山一郎文部大臣は、美しい団結精神の発露、日本精神の精華みたいなこと言ってたけど、鳩山が戦前学問の弾圧をした張本人だ。学問は、様々で良い。不揃いで良い。反政府も良し。非能率でも良い。何が正しいなんて簡単にわからないし、あとで何が役立つかなんてわからんから。

→私ら小学生の頃は隣組もラジオ体操も盛んだったけど、今はさっぱりだな。そういえば俺のおやじ年代は、戦争体験者たちだった。いいのか、悪いのか、戦争経験者はいなくなった。あの頃は、子供がいっぱいいて、徒党を組んで路上・空き地・人家の庭・荒れ邸・城跡、どこでも遊びまわった。今は子供は少なく、高齢者がひしめいている。数少ない子供は、TV・スマホ・ゲームなどに夢中。いいのか悪いのか。

 

平沼騏一郎という男が「虎ノ門事件」(皇太子爆殺未遂事件)を利用し「共産主義者を取り締まらなければならない」といい、そんな動きが治安維持法につながった。

→この平沼、後首相となり、独ソ戦が始まると、「欧州の天地は不可解」という言葉を残し辞職した。確かに不可解かもしれないけど、それが世界の外交というもんだろ。情けない男なんだ。こんな男に思想が絞殺された。

 

⑦この作品は、大正デモクラシー軍縮、震災不況、金融恐慌、満州事変、2600年記念行事等いろんなことに触れている。それぞれ重要なこと思うが、この作品の作者の視点がわからなかった。

 

⑧私が気になるのは、番組でちょこっと触れた、満州事変の時、国民がそれを熱烈に支持したこと。そのキーワードが「満州は日本の生命線」という事。

 

戦後は、満州どころかそれまであった台湾・朝鮮・南樺太南洋諸島すべてを失ったけど、戦前よりはるかに豊かになった。当時なぜ満蒙は日本の生命線と思ったか?そう思ったからこそ、日中戦争・太平洋戦争に突入したわけだから。

 

 

近頃NHk+が視聴できるようになって、しかも戦争・震災と私の関心の深い番組がいっぱいあって、このブログも粗製乱造気味だ。「この国のかたち」も読まなきゃいけない。

 

少し休憩しよう。それに雨が実に久しぶり降って、秋冬野菜にとりかからなきゃね。