賛成派も反対派も読んだ方がいい「原発ホワイトアウト」(2)

(続き) 10章 謎の新聞記事 新崎県伊豆田知事が原子力ムラの策謀に落ち、汚職を追及されるという内容。もちろん福島県知事佐藤栄作の「汚職事件」をモデルにしている。→佐藤栄作の汚職事件について原子力ムラの罠に落ちたのか汚職があったのか私はわから…

賛成派も反対派も読んだ方がいい「原発ホワイトアウト」(1)

①若杉冽「原発ホワイトアウト」を読んだ。福島第一原発事故後の原子力ムラの復権を描いている。最後は、テロによって 再稼働した原発がメルトダウンする話で終わる。②小説なのでありそうなウソである。しかし原子力ムラの、官僚・議員・電力会社等が自分たち…

特定秘密保護法が成立した日に(3)

特定秘密法が成立しそうな夜勤の数夜に藤沢周平「海鳴り」を読んだ。藤沢作品は多く読んでいるがこの小説は読んでなかった。簡単なごく簡単なあらすじ紹介で「崩壊する平穏」見たいなのがあったので、かわいそうなのはいやだなと思って読んでなかったのであ…

「顔に降りかかる雨」を読んで

桐野夏生の「顔に降りかかる雨」を面白く読んだ。最後のどんでん返しに意表を突かれた。なるほど言われてみれば、伏線が張ってあって矛盾はなかったと思う。ところで、桐野夏生という人が女であるとこの本の写真で初めて知りました。

「絶望の国の幸福な若者たち」を読んだ感想(古市憲寿著)

①随筆を読んでいるような感じがした。いや、知識と知性がある若者のおしゃべりを聴いているような感じを受けた。「だけど・・・」、「だって、・・・」という話し言葉が結構入っているのがその理由かな。 ②ユーモアというか、諧謔というか、ところどころにあ…

僕の「内なる天皇制」 「にんげん蚤の市」

朝日新聞11月27日に森達也氏の「内なる天皇制」というインタビュー記事が載っていた。若者(森氏が教えている明治大学生)に、天皇が権威として生きているという指摘があった。そして左派にも依存感情が生まれているのではといい、自分にもその心性があると…

熊谷龍也「調律師」を読んで。

第一に思ったのは、熊谷の豊かな才能についてであった。熊谷は、思いつくだけでマタギもの、動物もの、仙台もの、戦争もの、教師もの、開拓もの、青春ものなど多くのレパートリーがあるが、これは、調律師の話である。あたりまえであるが、良く勉強したと思…

開沼博「フクシマ論」を読んで

この二日をかけて「フクシマ論」を読みました。自分なりのまとめと感想は以下の通りです。①同書は、2011年1月に東大に出された修士論文を中心とする著書であり、原発事故以前の「原子力ムラ」のレポート及び考察としてきわめて価値が高い。 ②「原子力ムラ」…

幸せすぎるのは面白くない

佐伯泰英の時代小説「居眠り磐根江戸双紙」42巻43巻を読んで思ったことである。 同書は、2002年から現在まで続くフタバ文庫の人気シリーズとか言われるものである。 私も今年図書館から借りて、多分全てを読んだと思う。40巻以上読んだのだから面白いのは間…

牛の命、人の命

夜勤明けで眠ろうと思い布団にもぐりこみましたが、眠るのに失敗し、起き出し仕方なくブログを書き始めました。・・・散歩に行けば良かった。 私は全ての牛の処分に立ち会いました。夫婦そろって牛を見送っていた家では、牛を乗せたトラックが発車しようとす…

近頃よんだ原発・震災関係の本

ブログを書かないで、本を結構読んでいたので、備忘のため思ったことを書いておく近頃すぐ忘れるので、印象に残ったところ・感想を記録しておくつもり。(!)小出裕章「原発のウソ」(2年前の6月発行) 幸いにして彼の言う最悪事態「水蒸気爆発」はおきて…

「散り椿」と「もうひとつの余命」

葉室の「散り椿」を読んだ。良く言えば「贅沢」、悪く言えば「てんこ盛り」(悪意味かどうか良くわからぬが)とおもった。男同士の友情物語でもあり、男と女の愛情物語でもあり、中心人物の一人の甥っ子の成長物語でもある。藩の政治権力争いでもあり、剣戟…

「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」を読んで

橘玲という人の本。感想の第一は、分からなかったということ。8割方分からなかった。中高生時代、数学など、なんでそうなるの?とわからなくて自分の頭にがっかりしたことを思い出した。嫌な気分。 感想の第二。 分からぬながらも、安心したこと。 アベノミ…

脳死生体移植は殺人ではないのか。渡辺淳一「ダブルハート」を読んで。

渡辺淳一の「ダブルハート」を読んだ。渡辺氏は、野口英世の話や失楽園はよんだが(あと「阿寒に果つ」、そのほか少々)、医者の目で見た医学界のことについては、今回が初めてだ。 「ダブルハート」は、心臓移植の話だ。1968年の札幌医大の日本初の心臓移植…

旅の半ばで

久しぶりに熊谷龍也のものをよんだ。「虹色にランドスケープ」という短編集だ。短編集と言っても、バイクに関連しての連作短編集と言ったらいいのかな。何らかのつながりのある(バイクに関連して)人がそれぞれ主人公になっての話である。この中で一番良か…

浅田次郎「一路」を読んだ

昨日から今日にかけて浅田次郎の「一路」を読んだ。久しぶりの浅田次郎である。まあ面白かった。ユーモア小説かなと思った。前半では、井上ひさしの「吉里吉里人」を思い出した。言葉遊びが結構あった。浅田にこのような小説があったろうか。思い出せない。…

対岸の彼女

角田光代さん三冊目。いやーまいった。わかんねー。何を言いたいのかわかんねー。それでいて、面白くないわけではない。女という生き物が多分わかんないんだろうな。ナナコは、消えたままなんだ。そんなもんなんだ。なぜ、小夜子から見て、葵はナナコみたい…

女も大変だ 「森に眠る魚」

いやー苦手な小説を読んじゃった。角田さんの「八日目の蝉」に感動したので、彼女の小説を読んでみたが、苦手と言うのが感想の第一であった。子育て「お受験」世代の女性が次々と出てきて、誰が誰だか分らなくなった。もともと多くの登場人物が出る小説は苦…

「どう生きたところで私の一生です

すごい小説を読んだという気がした。乙川優三郎「冬の標」である。時代は幕末。明世は、比較的裕福な武家の娘。幼いころから絵画に優れ、信頼する師と出会い、絵師として生きる志を持つ。しかし、武家の娘、家の束縛から逃れようもなく、結婚し、子をもうけ…

五年の梅

乙川優三郎の短編集「五年の梅」を読んだ。直木賞作家の山本周五郎賞受賞作品という触れこみにひかれたためだ。も一つ、この前読んだ「生きる」が面白かったためだ。表題作の「五年の梅」が賞の該当作なんだろうか。どうもいまいち腑に落ちなかった。 雑と言…

音道と滝沢の掛け合い

いやー。長かったな。 おとといから昨晩にかけて、乃南アサの「風の墓碑銘」を読んだ感想の第一はこれだ。警察小説と言うのか、推理小説と言うのか、何というのだろう。まあなんというなんてどうでもいいことだ。まあ、面白かった。この長い小説を読ませる推…

「その子はまだ朝ご飯を食べてないのよ」 八日目の蝉

角田光代「八日目の蝉」を読んだ。この小説は、母性の小説だと思った。第1章では、希和子の誘拐という犯罪を希和子の立場で描いている。 彼女は、不倫相手の奥さんの生んだ子どもを誘拐する。希和子は、彼の子を身ごもったのに堕胎せざるを得なくなった。同…

凛とした生き方 乙川優三郎「生きる」

家老に殉死を止められて、藩内・家族からも白い目で見られ、ほとんど全てを失っても、 生き続けた男の話。主人公が失ったものは、藩内の信頼・友人、娘の夫(殉死)、娘の信頼、その上息子まで殉死で失った。主人公はもともと殉死したいと思っていたのである…

へえーとびっくり「逆説 エコの常識」

びっくりというか、自分がものを考えなく、マスコミなどを鵜呑みにしていたことをしっかり認識させられた。著者は武田邦彦氏。一番なるほどとおもったのは、地球温暖化で南極・北極の氷が解けてツバルなど海抜の低い島が海没するというウソ。確かに南極の平…

「老猫」と「木下闇」

久しぶりに荻原浩作品を読んだ。短編集である。「押入れのちよ」と言う短編集である。この中で一番おもしろかったのが、「老猫」であった。 おじから遺産としてもらった古い家に老いた雌猫が居ついていた。新しい環境に主人公家族がなじんでいくが、実はこの…

残酷な純子「阿寒に果つ」

何の気なしに古い文庫本を手にとって読み始めた。この本は、妻の妹のもののようで、道理でこんな本あったけと記憶になかったはずだ。面白かった。 純子と言う女の子の14才〜18才を描いている。その描き方が特徴的である。初めに、高校の同級生の男の子から見…

「複雑な彼」と「64」

三島由紀夫の「複雑な彼」を読んだ。面白かった。ヒーローのエピソードのそれぞれが面白かった。ロマンチックでもあった。特に17歳の時のマダム・サルザールとのアバンチュールは、印象的だ。一夜出会って、その朝結婚しようとする。そんなことがあるかもし…

近頃読んだ本

池波正太郎と横溝正史と森村誠一と和久俊三を1〜3冊づつ読んだ。かつて良く読んだ作家たちだ。しかも印象に残っていた小説たちだ。まあまあ面白かったという程度かな。 知っている話なので、興味がかきたてられるということはない。 思ったことを若干帰す…

ロッテは悪女か 「若きウエルテルの悩み」

(1)客観的にみると、ウエルテルは無理な恋に狂い自殺したバカな男といえる。しかし、心情的には実にウエルテルに同情する。つまり読者に同情させるだけの手腕が作者にあるといえる。なぜ同情するんだろう。ウエルテルの目から見たロッテが魅力的だからだ…

居眠り磐音江戸双紙ー人のつながりー

「居眠り磐音」の今出ている全40巻分を読んだ。こんな長いのを読んだのは、いつ以来かなあ。近頃では、「夜明け前」以来かな。時代小説では、「用心棒日月抄」以来だな。 「磐音」には、魅力的な人物がいっぱい出てくるな。まず主人公がいい。超人的剣術の強…